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めいじのせんそうぶんがく

明治の戦争文学

黒島 伝治

「明治文学講座 第四巻」木星社、1932(昭和7)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,887 字 · 24 页

青空文庫

一方には、自意識と神経と血のかよった生きた人間。

勿論、「将軍」に最も正しく現実が伝えられているか否かは、検討の余地のある問題であるが、こゝには、すくなくとも故意の歪曲と隠蔽はない。将軍も兵卒も、いわゆる「人間」としてとらえられているのである。

「肉弾」が過去に於て、一千版以上を重ねたと云われる程、多く読まれたとするならば(こゝでは、その大衆的影響を考慮に入れて、わざ/\文学的研究の対象として取上げたのであるが)それは、現実が正確に反映していたからではなく、むしろ反対に、一色に塗りつぶされた勇敢と献身と熱烈な武者振りが、支配階級が必要とした愛国主義と軍国主義の鼓吹に大いに役立ったがためだろう。軍隊では「肉弾」を一冊ずつ兵卒に買わせて読ませた例を知っている。そして、広く行き渡ったにもかゝわらず、いまだ文学的批判の対象として取り上げられなかったらしいのは、従来の文学批評家の文人気質によるというよりは、愛国的熱情があまって真実を追求しようとする意力の欠如が、文学としての価値を低めているがためだろう。

よき文学は、叙述のうまさや、文才だけによっては生れない。