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やせがまんのせつ
明治十年丁丑公論・瘠我慢の説
福沢 諭吉
福沢諭吉『明治十年丁丑公論・瘠我慢の説』。同一底本的分册已合并为一书。收入:瘠我慢の説、旧藩情。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,663 字 · 48 页
平民と同格なるはすなわち下落ならんといえども、旧主人なる華族と同席して平伏せざるは昇進なり。下落を嫌わば平民に遠ざかるべし、これを止むる者なし。昇進を願わば華族に交るべし、またこれを妨る者なし。これに遠ざかるもこれに交るも、果してその身に何の軽重を致すべきや。これを是れ知らずして自から心を悩ますは、誤謬の甚しき者というべし。故に有形なる身分の下落昇進に心を関せずして、無形なる士族固有の品行を維持せんこと、余輩の懇々企望するところなり。ただこの際において心事の機を転ずること緊要にして、そのこれを転ずるの器械は、特に学校をもって有力なるものとするが故に、ことさらに藩地徳望の士君子に求め、その共に尽力して学校を盛にせんことを願うなり。
中津の旧藩にて、上下の士族が互に婚姻の好を通ぜざりしは、藩士社会の一大欠典にして、その弊害はほとんど人心の底に根拠して動かすべからざるもののごとし。今日に至ては稀に上下相婚する者もなきに非ざれども、今後ますますこの路を開くべきの勢を見ず。上士の残夢未だ醒めずして陰にこれを忌むものあれば、下士は却てこれを懇望せざるのみならず、士女の別なく、上等の家に育せられたる者は実用に適せず、これと婚姻を通ずるも後日生計の見込なしとて、一概に擯斥する者あり。