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めいじぶんめいしじょうにおけるふくざわおう

明治文明史上に於ける福沢翁

大隈 重信

「慶應義塾學報第百拾七號」慶應義塾學報發行所、1907(明治40)年5月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,696 字 · 14 页

青空文庫

最も畏敬する先輩として、実にあの人を失ったのは非常に悲しむのである。しかしながら福沢先生の精神と思想というものは即ち慶應義塾という一の団体、この団体は有機体である。その精神に福沢先生が宿っている。而してこれは次第に発達するに相違ない。而して福沢先生の思想はまだ十分の一も実現していないのである。ことに先生の末年に於て、精神界に於ける道徳上の問題についてはその端を発したというだけである。これは先生が諸君に責任を遺した。慶應義塾という有機的団体に遺されたものであると信ずるのであります(拍手)。

この五十年の祝典はその福沢先生の精神が大なる図書館となって現われた。同時にその精神は愈々慶應義塾をして将来に発展せしめ、而して無論官立も公立も私立も、沢山学校はあるが、これを兄弟として論ずれば一番兄である。恐らくは帝国大学その他の官立公立、あらゆる学校を合しても遥かに年少である。慶應義塾は一番先輩である。而して日本に新文明を皷吹する上に於て、実に偉大なる指導者である。かくの如く慶應義塾という団体的生命には、福沢先生の精神が宿っているのである。人の生命には限りがあるが、この心霊的精神、慶應義塾という団体の精神は永久的のものである。