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めいじぶんめいしじょうにおけるふくざわおう
明治文明史上に於ける福沢翁
大隈 重信
「慶應義塾學報第百拾七號」慶應義塾學報發行所、1907(明治40)年5月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,696 字 · 14 页
大政維新、王政復古というので、昔に復するのであるから古文学でなくてはいかぬ。西洋学者には古文学は出来ない。そこで建白書というものを見ると懸巻も畏し、そういう文体で建白書を出す。そうすると直ぐに役人に採用する。そういう様にして皆役人になった。ちょうど福沢先生が熱海に入湯しているところへやって来て、面白い世の中になった、お前一つ役人にならぬか、建白をやると直ぐ役人になれると言うと、先生は御免蒙る、予は懸巻も畏くは大嫌い、真平御免だ。前に戦争をやろうと言った時に先生の事を臆病者と言った者が、今度は懸巻も畏くになった。だからそういう先生を名づけて懸巻も畏く先生といった。よほど奇談だ。これも今話してみると滑稽のように聞えるが、なかなか尋常な事ではない。王政維新の勢いは盛んなるものである。その時には誰でも――ただいま牧野〔伸顕〕文部大臣が御話しになったように、政府万能主義の時代である。何か仕事をしようといえば政府に入らなければならぬ。それに御免蒙るといって決して仕えない。
それからどういうことが起ったかというと、王政維新にはなったが思想界に於ては復古の思想と維新の思想と、二つの潮流が大衝突をしてたびたび叛乱が起り、全国の頑固党は猛烈なる反抗をしてたびたび暗殺をする。