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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

12 その十一 稲妻は見たり

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,240 字 · 52 页

青空文庫

井戸がポッカリ口をあけると、新十郎はのぞきこんだが、

「どうも深くて見えないが、すでにこの臭気で、だいたいは想像できますね。井戸の底には、今度こそホンモノの三枝子さんの屍体がある筈です。そうか。やっぱり、そうだったか。犯人はそこまで考えていたのだなア。実に怖しい犯人だ」

覆面して井戸へ降りた職人がひきあげてきたのはまさしく三枝子の殺された屍体であった。そッちには目もくれず、新十郎が目をそそいでそッと手を握っているのは頼重太郎に対してであった。

「あなたは太陽なんです。ね。お分りでしょう。これぐらいのことで、太陽ともあろうものが。太陽が泣くなんて……」

一室に足どめされていた関係者の中の真犯人はすでに捕えられていた。一同にうながされて、新十郎はあまり気持もすすまぬらしい話しぶりで、事件の真相を語った。

「事件の翌朝、三枝子さんの失踪が分った日の、泥や汚物でつくられたものが奇妙だとお考えになりませんでしたか。泥の足跡はふいた様子もありますが、ふき残したところもあって、それは二人の足跡を示しています。寝床は一ツしか敷かれていないが、押入れの中には一そう泥だらけのフトンがあって、その中には念入りにメガネまであって誰かの寝たあとを示しているし、吐いた汚物の下には他人の所有を示す署名の本がある。