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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
14 その十三 幻の塔
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,140 字 · 31 页
「縁の下に入り口がないのかえ」
「ございません。四囲は石材をぬりかためたものです」
「新門の辰五郎の話では、ぬりこめた石材をうごかす術もあるそうだぜ。土蔵造りの左官屋が、縁の下にうごく壁をつくっておいて仕事をしていた例もあるそうな」
新十郎は上気して、目をかがやかせた。
「有りうべからざることは、起り得ない道理です。どうして、そこに気がつかなかったろう。先生のお言葉の通りです。私はそれを見た。しかし、気がつかなかった。なぜ、そこに死んでいるか、そのワケにこだわりすぎたためでした。私はたしかに見ました。血の殆どかかっていない壁が二ヶ所にあった。一方は犯人の身体にさえぎられたと考え、一方はその方角に血が飛ばなかったと考えたのです。なぜなら二ツの壁は向い合っていた。ですから、犯人が血をさえぎった反対側は、被害者の背中の側だと考えたのです。ところが被害者の一人はクビの動脈もきられているし、一人は横にくの字に折れています。背後にも血がとぶべきであった。すると、そのとき、その壁は開いていたのだ。まさしく、それに相違ない。有りうるが故に、起るのだ。加害者は壁があいて、被害者のもぐりこむのを、待ち伏せていたのです」