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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

16 その十五 赤罠

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,372 字 · 67 页

青空文庫

数名の坊主につづいて十名ちかい火消人足の一団が、

「危い! 危い!」

連呼して、もつれつつ駈け上り、扉の前で押しひしめく。一かたまりの人むれに押されて、扉がドッと中へ倒れた。同時にドッとあおりたつ煙につつまれた。全てはまったく一瞬とも云うべき短い時間の出来事だった。

煙に追われて一同は、ナダレを打って逃げ降りた。コマ五郎は老師をシッカと抱きかかえていた。それが「動」の終りであった。火に包まれた仁王様を「不動」とはうまく称んだもの。ダビ所はエンエンたる火焔につつまれ、はげしい不動の時間の後に燃え落ちたのである。もはや誰もどうすることもできない。ただ、見まもっているばかりである。棺桶の上には扉が倒れかかっていたが、やがて火焔につつまれて、全ては姿を没してしまったのである。

喜兵衛は生きながら焼け死んだが、呻き声もきこえず、姿も見せなかった。そして、不動の悲劇のテンマツを二人の怪探偵もカタズをのんで見終ったのである。

★

ここに、まず問題になったのは、火消装束に身をかため、まるでこの場にあつらえ向きに勢揃いのコマ五郎及び輩下の五六十名という夥しい人数が、手をつかねて燃えるにまかせ、死する喜兵衛をむなしく見送ったのはナゼかということであった。