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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
15 その十四 ロッテナム美人術
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,950 字 · 85 页
もともと克子の部屋は宗久の書斎から遠く離れていたが、彼の結婚までは気の向いたとき兄の部屋へ自由に出入できたのである。しかし、新婚後は、自由に出入もできない。別に禁ぜられたわけではないが、兄の書斎の隣室も、寝室の隣室も、その他の多くの部屋部屋がシノブの居間や化粧間や応接間や寝室などに飾り代えられ、それにつづいてキミ子にカヨ子という二人の侍女の部屋があった。この侍女は宗久とシノブの二人につきそって身の廻りの世話をやき、その下にスミという小間使いがいる。それだけで宗久の一家族が構成され、まるでシノブや侍女にさえぎられて、克子はその奥へ気楽に踏みこみがたい感があった。次第にそこが他人の家になったように思われた。
その彼方の一劃には、いつも女たちの明るい笑声がわきたち、音楽がかなでられ、訪なう客も絶えるとき少く、食卓は常に賑やかで長時間であった。
克子は夕食の時だけその食卓につらなった。他の食事は時間が違っていたし、夕食としても克子の時間にはおそすぎたが、強いてそれに合わせるように努めていたのである。
けれども女主人や侍女たちや訪客たちの明るい笑声の蔭に男主人の姿だけがだんだん暗く悲しく苦しげなカゲリを深め、いつも何かを逃げるような、逃げたいような哀れさの深まるのを見るにつけ、克子はそれを見る苦しさにも堪えがたかっ