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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

19 その十八 踊る時計

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,713 字 · 54 页

青空文庫

いつもの通り中から一応カギをかけたが、五分ほどすぎてから跫音を殺して出てきて、

「コンコンと熟睡だ。だが、これは何だろう? 北のドアから誰かが一度はいったのかな。特に変ったこともないが、感じが何かをささやくような問題だ。これは伊助の落し物かも知れないな」

それはツケヒゲのようであった。しかし伊助は来たときもツケヒゲなぞはつけていなかった。

「こんな物が落ちていたのですか」

「マア、マア、気にかけるな」

大伍は笑って行ってしまった。

この日はたしかに変っていた。午後になっても、変った訪問者が絶えなかったからである。十二時をややまわったとき、川田秀人が馬車を走らせてやってきた。

川田は全作の唯一と云ってよい友人であった。銀行の副頭取だが、古美術では人後に落ちない趣味家であった。

川田が全作を訪ねてくるのは、たいがい土曜日の夜だ。夜の七時から十時まで。それが全作の面会時間だから、土曜日以外に来ることがあっても、午ごろ来るようなことはない。一同のいぶかしむ顔色に川田は笑って、

「病人に会いに来たんじゃないよ。大伍君で間に合う話のようだが、なかなか云ってきかせてくれない人だね。