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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
19 その十八 踊る時計
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,713 字 · 54 页
ノッシノッシ一廻りしてきた川田さまの顔は静かなタダの顔でした。静かなタダの顔の怖しさが身にしみたのよ」
妙子はこの言葉をきいてビックリした。その静かなタダの顔がアリアリと目の前に見えるように思われた。川田は銀行家だ。人殺しも血も墓から掘りだした美術品も人骨も、十円札と同じように一枚々々数えているタダの顔なのだ。
殺された全作やその弟の大伍は、同じ十円札をかぞえても、銀行家のようにタダの静かさではない。人生万事にもっとダラシなく喜怒哀楽がこもっている。人々に呪われて生きていた全作は人を凍らせるように冷い人間だったが、殺されて冷くなったせいか、彼の冷さの凄味が甚しいものでないことが妙子に分ったような気がした。冷く見える冷さはタカが知れている。
大伍は彼の職務の本体がなくなったから、便器を中心に一意精励努力する焦点がくずれて、その虚脱を最も象徴的に示しているのが鼻ヒゲだ。彼はもう川田のように妖気や威厳をおびて歩くことはできない。彼が昨日まで歩いていた部屋には川田が歩いている。そして彼自身は女中部屋でウタタネしていた。
「主人が死んでも女中はヒマをだされるとは考えていないな。