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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
19 その十八 踊る時計
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,713 字 · 54 页
そして泥棒が人を殺しても盗む必要のあるものは、単なる美術品ではあり得ない。美術品には公定価格がなくて、趣味が問題ですから、人殺しに引き合うほどの価格はないのです。だが、あの仏像だけは人を殺しても引き合うのです。百カラット以上のダイヤモンドがついてるのですから」
なるほど彼の話をきいてみると、彼が昨日二度も現れて全作の買い物を偵察したのは充分の理由があったということが分った。
その仏像を持ちまわっている者があるとすれば、彼は村役場の小使で、その昔は支那まで行商に歩いたことがある人物だという。それは行商人伊助の風体に合わないこともなかった。
「あなたは仏像泥棒以外の犯人をお考えの余地がないでしょうか」
と新十郎が川田にきくと、
「それはむろん昨日でさえなければ大アリですとも。家族はたいがい全作氏に好意的ではありませんでしたね。彼が死ねば幸福になれる人もあります。けれども昨日は別の日ですよ。私の銀行へ使者がとりにきた五万円の金がそれを物語っています」
川田は静かに微笑して答えた。
「あなたは午すぎにいらしたとき、邸内をしばらく散歩なさッたそうですね」
「左様です。