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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

19 その十八 踊る時計

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,713 字 · 54 页

青空文庫

「踊り子がうごきだすと、糸をひッぱる。置時計の直径は八寸ほどありますから、踊り子がオルゴールのフタをあけるには充分すぎますよ。で……」

新十郎はニヤリと笑って、オルゴールの箱を手にとって、中からスズリをとりだして見せて、

「フタがあいた拍子に軽いオルゴールの箱がバタンと音をたててひッくり返りでもするとヤッカイですから、中へスズリを入れておきました。この部屋にはいろいろな骨董があるが、オルゴールの箱に入れることができてオモリの役を果す品物というと、まったくスズリぐらいしかありません。オルゴールにスミをつけてしまったのは犯人の大失敗ですよ。できれば置時計も隠すか止めておくかすべきでしたね。もっともこの置時計は一週間まきの時計ですから、こわさないと途中ではとめられない。もう犯人はお分りでしょうね」

新十郎にこう訊かれて、虎之介はハトが豆鉄砲をくらッたようだ。海舟先生がついていないと、この男の威勢のないこと夥しい。仕方がないから新十郎は説明をつけたした。

「十一時にオルゴールが鳴ってから、この部屋へはいった人が犯人にきまっていますよ。なぜなら彼はこの部屋の主人が死んでいることも、時計とオルゴールの仕掛けも見ていながら、部屋の中には変りがなかった、病人はコンコンと眠っていると申しているのですからね。