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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
20 その十九 乞食男爵
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,755 字 · 62 页
むろん父の男爵もモウケルことで子供に劣るような人物ではないから、せッせと物色して目ぼしい物をかきあつめる。
タンスのヒキダシは一ツ一ツ放り出す。ひッかきまわす。机のヒキダシも、押入れの中のものも放りだしてひッかきまわす始末であった。
久五郎の妹の小花(二十)が腹を立てて、兄をせめた。
「何をボンヤリしているのですか。他人にわが家をひッかきまわされて、ボンヤリ見ているオタンチンがあるものですか。追い返すことができないのですか」
「破産してしまえば、オレのウチも、オレの物もあるものか。踏みつけられるだけ踏みつけられるのをジッとこらえているだけがオレにのこされた人生なんだ。ジッとこらえるほかに、何ができるものか。一ツや二ツのことにジタバタしたって、オレが失った人生は取り返されやしない」
「破産したから離婚だの慰藉料をよこせだのと仕たい放題に振舞われても、刀をぬいて斬りつけることもできないのね。魂からの素町人のマヌケのイクジナシ。豆腐に頭をぶッて死んじまえ。こんな情けないマヌケのイクジナシが私の兄だなんて、まッぴらよ。私も離縁するから、そう思ってよ」
久五郎は長火鉢によりそって端坐して、人々のなすがままにまかせて放心しつづけていた。