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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
13 その十二 愚妖
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,839 字 · 55 页
「特別壮健ではございませんが、若いころは船乗りで、相当に身体のシンはできた方で、特に持病もございませんし、オメオメ牛に突き殺されるほどモロイ人だとも思われませんが、あいにく防ぎにくい場所で間が悪かったのかなどと皆さまがそれもフシギの一ツに算えておりましたようです」
そこは牛の姿を隠す特別の場所だから、非常に木立のしげったところだ。菅谷はそれを思い出して考え直してみたが、しげみが深いということは、時に逃げるに不自由かも知れないが、攻撃をよけるに好都合な意味もあるに相違ない。ところが雨坊主が突き伏せられたのは、シゲミのマンナカあたりで、ちょッとした広さのほぼ中央だ。そこに屍体があって血だまりはそこにしかない、ただ一ヶ所しかない小さな広さのマンナカに殺されているということは、つまり、彼は逃げなかったということを意味しているのではなかろうか。
雨坊主はなぜ逃げなかったか? 逃げられない特別な理由が有りうるだろうか?
菅谷は、自分の頭が単に謎を提出するだけで、一ツも解く力がない、ということをイヤというほど思い知って切なかった。どうも観戦記、イヤ、批評家的で、実戦の役には立たんようだぞ、と薄気味が悪くなったのである。