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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

04 その三 魔教の怪

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,829 字 · 45 页

青空文庫

★

とっくに午をすぎている。虎之介がとんで帰ると、すでに新十郎の一行は出動したあとである。アッと驚くとたんに帯がとけてしまったのを、ひきずりながら一目散に走りだそうとすると、書生の晏吾がよびとめて、

「オットット。虎大人。どこへ飛んで行くツモリだね」

「ヤ。しまった! オレの行く先はどこだ」

「カケコミ教だよ。帯ぐらいしめるのを忘れなさんな」

「ナムサン、シマッタ!」

せっかく種を仕込んで来たのに先手をうたれては助からない。神楽坂から久世山までは谷を一ツ越すだけだが、走っても二十分はかかる。ふとっているから心臓の働きがまことに不充分で、カケコミ教へ辿りついた時には顔面蒼白、全身強直してヒキツケを起しそうである。哀れや、おそし。すでに警官百名、今や隊伍をととのえてひきあげるところ。すでに事件は終ったのである。

「どうした? 世良田摩喜太郎をひッとらえたか」

警官隊の先頭に立つ剣術の弟子に向ってきくと、

「ハッ、世良田と別天王は見事に自害して果てました」

「ムムム」

と歯をくいしばって、白目を返し、虎之介はドスンとその場へひっくり返った。精魂つき果てたのである。