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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
08 その七 石の下
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,242 字 · 65 页
「アア!」
彼女はフスマをしめて部屋にはいり、崩れるように坐りこんだ。断末魔の津右衛門が指さしていたのは、一つの方角ではなかったのだ。すぐその指の先にあるもの、碁盤なのだ。のたうちまわって前へ前へすすみつつも、指さしていたのは、たしかに碁盤であった筈。然り。たしか碁盤そのものであったのだ。
甚八が見落していた手筋というのは、敵の石をとって二眼できたとき、とった石を又とり返される筋があるのを見落していたのである。甚八ほどの打ち手が見落すのはフシギであるが彼は血迷っていたのであろう。この手筋を碁の術語で「石の下」と云うのである。
「石の下!」
津右衛門の言いたい言葉はこれだったのだ。人々の噂する金箱が、もしも隠されているとすれば、石の下なのだ。
その日から千代の思案と探索が新しく再びはじめられた。しかし謎も解けなければ、どの石の下とも判断の下し様がなかった。千代は遂にあきらめて、東太が成人したら、すべてを東太に明かして、東太の力で探させようと思ったのである。
それから二十年すぎた。そして新しく事件が起るのである。
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あのときから二十年たって、甚八は立派な棟梁になっていた。