轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
むかしのかじ
昔の火事
宮本 百合子
「改造」1940(昭和15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,494 字 · 21 页
猛之介の土地は、つい近頃一町歩まとめて或る会社に売れた。事変以来地価はあがるばかりだが、特にこの半年ほどは、秤の片っ方へ何がどっさりと載ったのか、価はピンピンとつりあがって、組合での地価も、初めの頃から見れば三倍ほどにはあがった。その価で一町歩売ったのが猛之介である。
碌三の地面は二町歩ほどであるが、割がわるいところにあった。土地が小さくいくつにかわかれて散在している上に、小さい沢に向って、この頃は乙女椿などが優しく咲いている藪になったところもある。大体が、道路から奥へ入りすぎていた。だから、土地と一緒に必ず道路を問題にする会社関係は、この奥へは手を出さない。坦々たる広い改正道路が新しく出来て、その左右には昔の街道の名残の大福餠屋、自転車屋などが、欅の大木の蔭や苔のついた藁屋根の下に店をひらいている。碌三の理髪店も昔から在るそういうこの土地らしい床屋の一つで、大福餠屋の店と同様、案外やって行けている。昔は街道往来の馬車挽だの、野菜車をひいて東京へ近在ものを売りに出る若衆を相手にしていたこれらの店へ、この頃入って来たのは、会社のマーク入りのカーキのジャムパアに、作業帽をかぶった若い者たちで、歩道のとこでキャッチ・ボールなんかしていたかと思うと、碌三の店をのぞいて、すいているとふらりと入って来たりする。