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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
それともおぬいさんにはまったく無頓着なのか。とにかくその人の名を園の口から聞かなかったのは……それはやはり物足らなかった。園の感情がいくらかでも動くのを清逸は感じたかったのだ。
「西山君も行くようなことをいっていたが……」
園は間をおいてむりにつけ足すようにこれだけのことをいった。
西山がそんなたくらみをしているとは清逸の知らないことだった。清逸は心の奥底ではっと思った。自分の思い立ったことを西山づれに魁けされるのは、清逸の気性として出抜かれたというかすかな不愉快を感じさせられた。
「もっとも西山君のことだから、言いたい放題をいっているかもしれないが……」
清逸の心の裏をかくとでもいうような言葉がしばらくしてからまた園の唇を漏れた。清逸はかすかに苦しい顔をせずにはいられなかった。
二時間目の授業が始まるからといって園が座を立ったあと、清逸は溜息をしたいような衝動を感じた。それが悪るかった。自然に溜息が出たあとに味われるあの特殊な淋しいくつろぎは感ずることができなかった。園が出ていった戸口の方にもの憂い視線を送りながら、このだだ広い汚ない家の中には自分一人だけが残っているのだなとつくづく思った。