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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

四角な箱のような機械室の四つ角にかけわたした梁の上にやっと腰をかけて、おずおず手を延ばして小窓を開いた。その小窓は外から見上げると指針盤の針座のすぐ右手に取りつけられてあるのを園は見ておいたのだ。窓はやすやすと開いた。それは西向きのだった。そこからの眺めは思いのほか高い所にあるのを思わせた。じき下には、地方裁判所の樺色の瓦屋根があって、その先には道庁の赤煉瓦、その赤煉瓦を囲んで若芽をふいたばかりのポプラが土筆草のように叢がって細長く立っていた。それらの上には春の大空。光と軟かい空気とが小さな窓から犇めいて流れこんだ。

機械室から暗窖のように暗みわたった下の方へ向けて、太い二本の麻縄が垂れ下り、その一本は下の方に、一本は上の方に静かに動いていた。縄の末端に結びつけられた重錘の重さの相違で縄は動くのだ。縄が動くにつれて歯車はきりきりと低い音を立てて廻る。

左の足先は階子の一番上のおどり段に頼んだが、右の足は宙に浮かしているよりしようがなかった。その不安定な坐り心地の中で詩集が開かれた。「鐘の賦」という長い詩のその冒頭に掲げられた有名な鐘銘に眼がとまると、園はここの時計台の鐘の銘をも知りたいと思った。