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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

空は思い存分に暗くなりまさっていた。木の葉は思い存分に散っていた。枯枝は思い存分に強直していた。その間には何らの連絡もないもののように。清逸は深い淋しさを感じた。同時に強いいさぎよさを感じた。長く立ちつづけていた彼の足は少ししびれて、感覚を失うほど冷えこんでいた。それに反してその頭は勇ましい興奮をもって熱していた。

昂奮が崇ったのか、寒い夜気がこたえたのか、帰途につこうとしていた清逸はいきなり激しい咳に襲われだした。喀血の習慣を得てから咳は彼には大禁物だった。死の脅しがすぐ彼には感ぜられた。彼はほとんど衝動的にその場にうずくまって、胸をかがめて、膝頭に押しつけるようにして、なるべく軽く咳をせこうと勉めたが、胸の中から破裂するようにつきあげてくる力には容易に勝てないで、二三十度も続けさまに重い気息をはげしく吐きださねばならなかった。一度血管が破れたら、そこからどれほどの血が流れでるか、それは誰も知ることができない。もし四合五合という血が出たら、それで命は彼からやすやすと離れていくのだ。清逸は喀血のたびごとにそれをもの凄く感ぜねばならなかった。

「兄さんでねえか」