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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

いっそう……そう思った時、おぬいさんが静かに、

「たびたび読みつかえたのをごめんくださいまし。意味が解らなかったのではないんですけれども、あんまり悲しいことが書いてあるものですから、つい黙ってしまいましたの」

といって、少し恥じらうようにこちらに瞳を定めた、渡瀬は背負投を喰ったように思った。たとえば憎悪でもかまわない、自分についておぬいさんが悩んでいてくれたら渡瀬は嬉しかったろう。彼は思い存分の皮肉がいい放ちたくなった。そしてわざと高笑いをしながら、

「文学者なんて奴は、尾鰭をつけることがうまいですからね」

といった。もちろんそれだけでは復讐がし足りなかった。何らの手管もなく、たった純潔一つで操られていると思うと渡瀬は心外でたまらなかった。純潔――そんなものの無力を心でつねに主張している彼には(そして彼は十七歳の時から立派に純潔を踏みにじってきているのだ)小癪にさわった。それにしても何んという可憐な動物だ。彼の酷たらしい抱擁の下に、死ぬほどに苦しみ悶えながら彼女の純潔が奪われていく瞬間を想像すると、渡瀬はふたたび眩惑するような欲望の衝動を感じないではいられなかった。