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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

十分に酔ったのを確めると彼は店を出た。

しかし渡瀬は酔いがすぐ覚めそうで不安だった。で酒屋の店に出喰わすと、そのたびごとに立ち寄って盛切をひっかけた。

「何、俺は結局おぬいさんとどうしようというのではなかった。ただ何んとしてもおぬいさんが可愛いいんだ。可愛いい犬ころをいじくり廻わして、きゃんといわさなければ、気がすまなくなるあれなんだ。いわばあれなんだな。だが待てよ、そうでもないのかな」

ある酒屋では小僧がからかうように、

「学生さん、お前さん酔っていますね」

といった。ふむ、俺の酔ってるのが分るのは感心な小僧だ。

「お前はまだ女郎買いはしめえな」

「冗談じゃないよ、学生さん」

渡瀬は十三四らしいその小僧の丸っこい坊主頭を撫でまわした。

「お前は俺が酔ったまぎれに泣いてるとでも思うんか。……よし、泣いてると思うなら思え。涙は水の一種類で小便と同じもんだ」

こういいながら彼は、またふらふらとその店を出た。

彼は人通りの少ないアカシヤ通の広い道を、何んだか弱りしょびれた気持になって、北の空から吹きつける雪に刃向って歩いていった。彼は自分が忠義深い士のような心持だった。