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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

ので……」

おせいはそれが崇っているのだと始めて始終が見えきったように思った。

「もっともあれはあれで親切人だから、そのことを根に持つような人柄ではないが、俺は頑固な昔気質だから、どうも寝ざめがようないのだ。俺は困っとるよ……」

と父は膝のまわりを尋ねまわして、別々になっている煙草入と煙管とを拾い上げると、慌てるようにして煙草をつめたが、吸うかと思うと火もつけずに、溜息とともにそれを畳の上に戻してしまった、おせいはおずおず父の顔を窺った。垢染みて、貧乏皺のおびただしくたたまれた、渋紙のような頬げたに、平手で押し拭われたらしい涙のあとが濡れたままで残っている。そこには白髪の三本ほど生えた大きな疣もあった。小さい時、きょうだいで寄ってたかって、おちちだといってしゃぶった疣だ。……思案にあまるというのはこれだろうか。彼女の心はしーんとしたなりで少しも働こうとはしなかった。おせいはひとりでに襟の中に顔を埋めた。無性に悲しくなるばかりだった。

力がなえきってみえた父は、最後の努力でもするように、おせいの方に向きなおって、膝の上に両肱をついて丸っこくかごまった。