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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

しまいには園は自分を憐みたくさえなった。しかもそれが父の死を知ったばかりの悲しみの中にあるべき身でありながら――園はさながら魍魎の巣の中を喘ぎ喘ぎ歩いていくもののように歩いた。

停車場には白官舎の書生だけが三人で送りに来ていてくれた。柿江は夜学校の日だというので顔を見せなかった。婆やも来てはいなかった。人見が「東京に行くとおもしろい議会が見られるね。伊藤が政友会を率いてどう元老輩をあやつるかが見ものだよ」といっていた。その言葉が特別に園に縁遠い言葉としてかえっていつまでも耳底に残った。

三等車の中央部にあるまん丸な鋳鉄製のストーブは真赤に熱して、そのまわりには遠くから来た旅客がいぎたなく寝そべっていた。八時に札幌を発った列車は、雪さえ黒く見えるような闇の中を驀地に走りだした。園はストーブからかなり離れた席に腰かけて外套の襟を立てて、黙然として坐っていた。床の上を足を動かすたびに、先客の喰荒らした広東豆(南京豆のこと)の殻が気味悪くつぶれて音をたてた。車内の空気はもとより腐敗しきって、油燈の灯が震動に調子を合わせて明るくなったり暗くなったりした。