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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

部屋じゅうが一時静になった。

声の色はまるで違っていた。人見はしかし西山の癖だけは腹立たしいほどよく呑みこんでいた。

「けれどもです、仏国革命の血はむだに流されはしなかった。人間全体の解放ではなかったかしれない。商工業者のために一般の人民は利用されたのだったかしれない。けれどもです、貴族と富豪と僧侶とは確実にこの地面の上から、この……地面の上から一掃され……」

「ばか! 幇間じみた真似をするない」

西山は呶鳴らないではいられなかった。今日の演説を座興も座興、一人の女を意識に上せて座興にしようとしている人見の軽薄さにはまったく腹が立った。第一似すぎるほど似ているのが癪に障った。

「けれどもだ、まったくうまいもんだな」

ガンベがそういった。そうして一同が高く笑い崩れるにしたがって、片方の牡蠣のように盲いた眼までを輝かして顔だけでめちゃめちゃに笑った。

西山はせきこんでうっかり「けれどもだ」と言おうとしたが、危くそれを呑みこんだ。そしていった。

「俺は不愉快だよこの場合。俺は今日は練習のために演説をやったんじゃないからな。冗談と冗談でない時とはちっと区別して考えるがいいんだ」