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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

こちらにいらっしゃいな」

そういっておぬいさんは誘ってくれた。婆やはそれをしおに諦めて、おぬいさんにやさしくかばわれながら三隅さんのお袋の所にいっしょになって、相対よりも少し自分を卑下したお辞儀をした。おぬいさんは婆やの涙ぐんだ眼を見るといっそう赤くなったようだった。婆やは、近ごろの若い人に似ぬ何んといういとしい娘さんだろうと思った。とにかく婆やは黙ってはいられなかった。いいたいことは山ほどあるのだが、書生さん相手では、婆やのいうことなどは上の空に聞き流されるのだから腹が立つばかりだった。誰かに聞いてもらいたいと思っている矢先だったので、婆やは何事をおいても能弁になった。

「星野さんはお留守だし、西山さんはきゅうに東京にな、お発ちなさるし、婆やは淋しいこんです。いい人でな、あなた。あんな人並外れて大きいがに、赤坊のような人でなもし。婆や婆やたらいって、大事にしておくれなさったが……ま、行く行くは皆ああして羽根が生えて飛んでいかれるは定なれど、何んとやら悲しゅうてなもし。私もお知りのたんだ一人の息子を二十九年になもし、台湾で死なしてから、一人ぽっちになりましたけに、世話をしとる若い衆がどれも我が子同様に思われてな、すまんことじゃけれどなもし。