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せいざ
星座
有島 武郎
1922(大正11)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页
なんぼう気の毒なことではないか」
醜いほど血肥りな、肉感的な、そしてヒステリカルに涙脆い渡井という十六になる女の生徒が、穢ない手拭を眼にあてあて聞いていたが、突然教室じゅうに聞こえわたるような啜泣きをやり始めた。その女の生徒は谷底で死んだというえらあい男を、自分の心の中で情人に仕立てあげてしまって、その死んだのを誠に自分の恋人の上のことのように痛み悲しんでいる……そうだなと柿江は直感すると、嫉妬というのではないが、何か苦々しい感情を胸の中に湧き立たせた。男の生徒たちはおおっぴらに女の方を見やる機会を得て、等しく物好きらしい眼を、渡井のしゃくり上げる肩のところから、手拭の下に真赤にしている横顔へと向けた。
とにかく柿江はまた一つのセンセーションを惹き起した。柿江はじっと渡井を見やりながら、今までの感傷的な顔色をやわらげて、なだめるような笑顔を見せた。
「はははは、何もそう泣かんでもいいよ。……その男は気の毒な死に方をしたけれども、いわば自分の大切な使命のために死んだんだから、悔むこともなかったろう……」
「それだでなおのこと気の毒だ、わし」
と渡井が涙の中から無分別げな、自分の感情に溺れきったような声を出した。