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せいざ

星座

有島 武郎

1922(大正11)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,460 字 · 235 页

青空文庫

ところが驚くべきことには、そこにいる女の生徒の顔や、襟足や、手足が、今までにもある感じを与えられていないことはなかったが、すぐ無視することのできたそれらのものが……柿江は本当に恐ろしくなってきた。……全身は悪寒ではなく、病的な熱感で震えはじめていた。頭の中には血綿らしいものがいっぱいにつまって、鼻の奥まで塞がっていた。頭の重さというものが感ぜられるほど何かでいっぱいになっていた。そして柿江が何かを反省しようとすると、弾ね返すように断定的な答えを投げつけてよこした。たとえば、世の中にはずっと清潔な心と自制心とを持った男がと考える暇もなく、それは嘘だ、皆んな貴様と同様なのだ、たぶん貴様以上なのだ。法螺吹きのくせに正直者の貴様には今までそれが見えなかっただけだ、と彼の頭は断定的に答えるのだ。彼はそしてその答えに一言もないような気がした。

それなら行こう、と柿江が実際自分の体を遊廓の方にふり向けようとすると、まあ待ってくれと引きとめるものがどこかにいた。女に引きとめられたらそんな感じがするのだろうか、その力は弱いけれども、何かしら没義道にふりきることができなかった。