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えいが「マルガ」にあらわれたどうぶつのとうそう
映画「マルガ」に現われた動物の闘争
寺田 寅彦
1933(昭和8)年3月(初出記載なし)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,747 字 · 4 页
といったようなふうで、あっさりと見切りをつけて結局このけんかはもの別れになるらしい。蛇のほうはやはり受動的であって、こっちから追っかけて行って飽くまで勝負を迫るほどの執念はなさそうである。
このような大蛇と虎の闘争が実際にしばしばジャングルの中で自然的に行なわれるか、どうか、少し疑わしく思われる。自然界に闘争の行なわれる場合は、どちらかがどちらかを倒して食ってしまうか、さなくば双方が死んでしまわなければ始末がつかないように思われる。始末のつかない闘争は勢力のむだな消費であり、自然界に行なわれる経済の方則に合わないような気がする。それで、この映画の大蛇と虎のけんかはやはり人間の仕組んでやらせた見世物興行ではないかという気がしないでもない。しかしこの映画を見ている時には、そんな理屈などはどうでもよいほどに白熱的な興奮と緊張を感じさせられる。たとえ興行者のほうでは芝居のつもりであったとしても、動物のほうでは芝居気などは少しもない正真正銘の命がけの果たし合いだからである。
ジャングルの住民は虎でも蛇でもなんでもみんな生きるために生まれて来ているはずである。