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えいが『じんるいのれきし』

映画『人類の歴史』

中谷 宇吉郎

「心」平凡社、1954(昭和29)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,910 字 · 20 页

青空文庫

もっともそういう点には、ここではあまり深入りしないことにしよう。くわしい内容のことは、次の問題として、多少あるいは大いに無理でも、とにかくこういう映画を作ることができたとして、話をすすめよう。

まず日本であるが、先史時代のことはわからないから、初めは白くしておくよりしかたがないであろう。一時間半の映写時間のうち、初めの一時間近くは余白、魏志倭人伝の頃から、赤い点が現われることにしよう。その色がときどき朝鮮の方へちょっとのびることもあるが、だいたいとしては、本州、四国、九州の三つの島が赤く染まっただけで、いつまでもじっとしている。そして最後の三分くらい前になって、北海道が、この中にはいる。ついで台湾、樺太の南半分、朝鮮が次々と赤くなる。このあたりから音楽がクレッセントになり、最後に金属打楽器がガンガンと鳴って、「大東亜」がぱっと真赤に染まる。かと思うと、四秒くらいでまたその色がひゅっと縮まって、もとの四つの島だけに戻り、それで映画が終るわけである。

この四秒間のために、大変な数の人が死に、皆が草の粉を食うようなひどいめに会ったわけである。ばかばかしいといえば、これくらいばかげた話もないが、しかし考えてみれば、これはなにも日本だけのことではない。