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えいがざっかん(ろく)
映画雑感(Ⅵ)
寺田 寅彦
「渋柿」1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,028 字 · 8 页
一体こうした種類の映画はもっともっと多く作られてよいものであろうと思われる。
とにかく、これでもかこれでもかと眼新しい趣向を凝らして人性の自然を極度に歪曲したものばかり見せられている際に、たまたまこういう人間らしい平凡な情味をもった童話的なものに出会うと清々しい救われたような気持がするから妙である。
五 泉
童話的な「紅雀」に対照すると「泉」は比較にならぬほど複雑で深刻な事件とその心理とを題材として取扱っているから、もし成効すれば芸術的に高級なものになり得るはずであるが、同時にこれを娯楽のための映画として観ると、観たあとの気持はあまり健全な愉快なものではないはずである。
「泉」は多くこの種の映画と同じように甘いと辛いとの中間を行っている。それだけに肩も凝らないがまたどっちもつかずで物足りない気もする。
汽車の中で揺られている俘虜の群の紹介から、その汽車が停車場へ着くまでの音楽と画像との二重奏がなかなくうまく出来ている。序幕としてこんなに渾然としたものは割合に少ないようである。
不幸な夫ルパートが「第三者」アリスンの部屋から二階の妻ジュリーの部屋への隠れた通い路を発見して、暗い階段をびっこ引きながら上がって行く。