轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はるのとうぞく

春の盗賊

太宰 治

「文芸日本」1940(昭和15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,212 字 · 58 页

青空文庫

「君、失敬じゃないか。草履くらいは、脱ぎたまえ。」

どろぼうは素直に草履を脱ぎ、雨戸の外にぽんと放擲した。私は、そのすきに心得顔して、ぱちんと電燈消してしまった。それは、大いに気をきかせたつもりだったのである。

「さあ、電燈を消しました。これであなたも、充分、安心できるというものです。僕は、あなたの顔も、姿も、ちっとも見ていない。なんにも知らない。警察へとどけようにも、言いようがないのです。僕は、あなたの顔も、姿も、なんにも見ていないのだから。とどけたってむだでしょう。僕は、とどけないつもりですから、あなたも、そのつもりで充分、安心して下さいね。」けれども、この表面は蜜のように甘い私の言葉の裏には、悪辣老獪の下心が秘められていたのである。私は、そう言ってどろぼうを安心させることに依って受ける私のいろいろの利益を計算していたのである。だいいちには、どろぼうをそんなに安心させて置けば、どろぼうの猛り猛った気もゆるみ、かれは私に危害を加えるということが、万々ないであろう。それから、後日、このどろぼうが再び悪事を試み、そのとき捕えられて、牢へいれられても、私をうらむことはないであろう。