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チュンタオ

春桃

宮本 百合子

「近代文学」2、3号、1946(昭和21)年2、4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,868 字 · 22 页

青空文庫

ぬき出してみると、その「春桃」は新本ではなく、誰かが金沢市の本屋で買ったものであった。そして、この本屋かどこかへ、売ったものである。そのことにも、一種の懐しみがある。買って帰って来た。

中国文学研究会という集りに対しては、随分古くから、ぼんやりした興味と期待とをよせていた。私たちの精神のなかには、所謂漢文学者を通してでない中国文学を知りたい欲望が非常につよい。現代中国文学の相貌について、深い関心が潜んでいる。その文学が、私共にも読めそうでいて、実は読めない。なまじ、魯迅を知り、魯迅の文学論を読む機会があっただけ、そしてエドガア・スノウの「支那の上の赤い星」の描写が刻みつけられているだけ、この自分でも読めそうで読めない現代中国文学は、不断の魅力となっているのである。

「春桃」は昭和十四年に支那現代文学叢書第一輯として出されたものである。七篇の作品が収められている。落華生「春桃」、冰心女士「超人」「うつしえ」、葉紹鈞「稲草人」「古代英雄の石像」、郭沫若「黒猫」「自叙伝」等である。

これら七篇の作品を読み、一貫してつよく心を打たれたのは、これらの中国の作家たちはおそらく小説で飯をたべてはいまい、というリアリスティックな印象であった。