轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はるふかく

春深く

久保田 万太郎

「都新聞」1924(大正13)年5月2、3、6、7日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,257 字 · 7 页

青空文庫

嘗て磯部というところへ行ったことがある。――上州のあの温泉の……

二十九の春とおぼえている。――駒形にまだいた時分だ。

みっともないから事の次第はいわない、とにかく、その時分、いまにして思えば空な話。――らちくちもない夢のような話をたよりに、わたしは、白痴みれんな毎日を送っていた。――寂しく、味気なく。――何をする張合もなく陰気そのもののような毎日を送っていた。

その間で、ふっと、東京にいるのがいやになった。――どこかへ行くことだ。――平生どこへも出たことのない奴がわけもなくそう思った。

で、直ぐ、そのつもりにした。外へ出たついでに旅行案内を買って来た。

磯部を選んだのは、島崎(藤村)先生のたしか「芽生」のなかにそこのことが出て来るのと岡本(綺堂)さんが、その少しまえ、そこへ暫く行っていられたというのを聞いたのと、そうした二つの理由からだった。――島崎先生と岡本さんの好みに合うところならどう間違っても大丈夫だ。――一人でそうきめたうらには、安中だの松井田だの、円朝の『榛名の梅が香』に出て来るそのあたりの、寂しい火の消えたような光景の自らわたしにさしぐまれるもののあったことは勿論だ……