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しょうわのじゅうよねんかん
昭和の十四年間
宮本 百合子
「日本文学入門」日本評論社、1940(昭和15)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,356 字 · 69 页
作家の精神と肉体とは現実に向って先ず活々と積極性をもって動き出さなければ文学に新生命はもたらされまいと云う要求が起った。当時のフランスの文芸思潮の積極的な動きがN・F・R誌などを通じて日本へもその影響をもたらしたこともある。「行動主義の文学」「能動精神」が雑誌『行動』を中心として、舟橋聖一、豊田三郎、田辺茂一等によって提唱された。
満州事変以来四年を経て、その年(昭和十年)は日本の文化が新たに遭遇しなければならないめぐり合わせについて、美濃部達吉博士の問題その他をめぐって、一層痛切に感じられた時でもあった。文化の擁護、知識の健全性の防衛と云う一般の要求が能動精神の提唱される一つの社会的雰囲気として槓杆の役目をした。文学以前の問題として一般に感じられたこの槓杆の行動的なまた能動的な押し上げは、行動の目的のある一貫性にまたなければ現実性を与えられないのであるが、当時、行動主義を唱えた作家達は、それぞれの属している社会層の小市民的な動揺性に於て数年来の不安混迷の空気を自身たちの身に滲みつかせており、そのことから、批判の精神を求めながらもそこに過去の文学への理性的な批判を持ち得なかった。