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しょうわのじゅうよねんかん

昭和の十四年間

宮本 百合子

「日本文学入門」日本評論社、1940(昭和15)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,356 字 · 69 页

青空文庫

人間を文学に再び息づかせるには、作家が先ず人間への愛をその精神の内に恢復させなければなるまい。自身の創作のモティーヴを見きわめ、描こうとする対象と自身との渾一の状態を求め、話の筋よりは作家の生命が独特の色、体温、運動をもって小説の世界に呼吸しなければならない。そのように作家が己れにかえる道は、短篇小説の新しい見直しにあるのではないかと考えられたのであった。

形式の上の小ささから、短篇が心境的な要素に立たなければならないという先入観は誤りで、例えばチェホフの短篇にしろ、短篇が普遍的なる世界をもち得ることは明かである。私小説に出戻るというのではなく、社会生活に対する興味と関心と、そのような社会生活を共同のものとして感じる心の肌理のつんだ表現としての短篇小説が期待されるようになったのである。

文学の文学らしさを求めるこの郷愁は、素材主義的な長篇に対置した希望で短篇小説に眼を向けさせ、岡田三郎の伸六という帰還兵を主人公とする連作短篇なども現れた。また十四年度に著しい現象とされた婦人作家の作品への好意と興味とも、一面ではそこに繋ったものであった。

今は純文学が文学の文学らしい形象性を意味するものとして云われるようになったのであるが、それが長篇に対する短篇という形式によってとりあげられたところに、やはりもう一度考慮