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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
岡本綺堂『時代推理小説 半七捕物帳(六)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:半七捕物帳、半七捕物帳、半七捕物帳、半七捕物帳、半七捕物帳、半七捕物帳、半七捕物帳。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 页
「今時分どこからお帰りです」と、源蔵はかさねて訊いた。
「鈴木さんへ歌留多を取りに行って……」と、お北は答えた。
「ああ、そうでしたか」と、源蔵はうなずいた。「そうして、ここで何か御覧になったんですか」
「白い蝶々が飛んでいるので……」
「白い蝶々……。ご覧になりましたか」
「こんな寒い晩にどうして蝶々が飛んでいるのでしょう」と、お勝が訊いた。
「わたくしももう三度見ましたが……」と、源蔵も不思議そうに云った。「まったく不思議ですよ。去年の暮頃から、時々に見た者があると云いますがね。この寒い時節に蝶々が生きている筈がありませんや、おまけに暗い晩に限って飛ぶというのは、どうもおかしいんですよ」
武家の子とはいいながら、若い娘たちはなんとなく薄気味悪くなって、夜風がひとしお身にしみるように感じられた。
「蝶々はどっちの方へ飛んで行きました」と、源蔵はまた訊いた。
「お寺のなかへ……」
「ふうむ」と、源蔵は窺うように墓地の方を覗いたが、そこには何かの枯れ葉が風にそよぐ音ばかりで、新らしい墓も古い墓も闇の底に鎮まり返っていた。
提灯の火が又ひとつあらわれた。拍子木の音もきこえた。