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じだいへいそくのげんじょう

時代閉塞の現状

石川 啄木

(強権、純粋自然主義の最後および明日の考察)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,915 字 · 20 页

青空文庫

(そうしてその際においても、我々はまだかの既成強権に対して第二者たる意識を持ちえなかった。樗牛は後年彼の友人が自然主義と国家的観念との間に妥協を試みたごとく、その日蓮論の中に彼の主義対既成強権の圧制結婚を企てている)

樗牛の個人主義の破滅の原因は、かの思想それ自身の中にあったことはいうまでもない。すなわち彼には、人間の偉大に関する伝習的迷信がきわめて多量に含まれていたとともに、いっさいの「既成」と青年との間の関係に対する理解がはるかに局限的(日露戦争以前における日本人の精神的活動があらゆる方面において局限的であったごとく)であった。そうしてその思想が魔語のごとく(彼がニイチェを評した言葉を借りていえば)当時の青年を動かしたにもかかわらず、彼が未来の一設計者たるニイチェから分れて、その迷信の偶像を日蓮という過去の人間に発見した時、「未来の権利」たる青年の心は、彼の永眠を待つまでもなく、早くすでに彼を離れ始めたのである。

この失敗は何を我々に語っているか。いっさいの「既成」をそのままにしておいて、その中に自力をもって我々が我々の天地を新に建設するということはまったく不可能だということである。