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とけいとまどのはなし

時計と窓の話

小川 未明

「小学五年生 4巻6号」1951(昭和26)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,803 字 · 10 页

青空文庫

」と、父にむかって、いうと、

「いや、時計は、時間を見るものだ。かざっておく、こっとう品ではない。もうちっと、待っておいで、いいのを買ってやるから。その前に、おまえのへやを直したいと思っているのだ。」と、父が、いいました。

それというのは、ことし三年生になった妹が、まだ自分のすわる机を持っていないので、いつも茶の間のちゃぶ台や、えんがわで、かばんから本を出して、勉強しているのを見て、母は、かわいそうに思って、

「よし子ちゃんにも、一つ机を買ってやらなければ。」と、いったことがありました。父も、

「正吉のいる、四畳半で、二人が勉強するにはすこし暗すぎるから、新しく窓をつけてやりたい。」と、母に話しているのを聞きました。

「時計よりか、へやの明るくなるほうがうれしいです。」と、ぼくは、いって、なぜ早く、妹のことを考えてやらなかったろうと、自分をはずかしく感じました。

「大工のつごうで、すぐにしてやるよ。」と、父がいいました。思いがけない二つの喜びが、一時にやってきたようで、私の胸はおどりました。

「こんなに、私たちのことを思ってくださるのか。」と、心のうちで感謝したのです。