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とけいとまどのはなし
時計と窓の話
小川 未明
「小学五年生 4巻6号」1951(昭和26)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,803 字 · 10 页
東にしか窓がなかったのを、西にも窓がつくと、同じへやとは信じられないほど、明るくなりました。しかも、その窓からは、これまで見られなかった森や、電信柱や、遠くの高い煙突までが、さながら、油絵を見るように目にうつったのです。この新しい風景は、ぼくの気持ちを、どんなに引き立たせたかしれません。
「これから、うんと、勉強ができるぞ!」
「にいちゃん、ごらんなさい。あんなに雲がきれいだこと。」と、妹が、森のいただきをさして、呼びかけました。
「あ、きれいだね。よし子ちゃん、クレオンで、あの雲を写生してごらんよ。」と、ぼくは、心が空へむかって、とび立つ思いがしました。
こうして、いきいきとした自然を見ると、たとえ、どんな平和な景色でも、時計についている動かないかざりを、感嘆して見る気がしなかったのでした。それに、時間が不正確とわかると、そばにおく気はもうなかったのです。
「こんどは、いい時計が、早くほしいな。」と、ぜいたくと知りながら、妹にむかって、私は、希望を話したのでした。
この希望も、たちまち達せられたのは、十何年か前に、父が、おき時計を買った、古道具屋の主人が、有田焼の大きな丸火鉢を、とどけてくれたからでした。