轻松读懂日语经典作品
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ばんか
晩夏
堀 辰雄
「婦人公論」1940(昭和15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,249 字 · 27 页
湖に沿った道をその部落のはずれまで往き切って、其処からこんどは落葉に埋まった急な坂を部落の方へ引っ返して往った。又、きのうと同様、すぐ面白いように人の家のなかへ踏み込んでしまう。ヴェランダ、鎧扉、木の段段、――どれもきのう見た奴と殆ど変りはない。なんだかきのうと同じ処を歩いているような感じだったが、ひょいと或る一軒の大きな別荘のなかへ迷い込んで、又引っ返そうとして、ふいと、その裏手の方を見ると、その裏木戸の上から白樺の木蔭になって「Green ……」という下手な横文字の看板の一部だけが見えていた。なんだかちょっと洒落た店のようで、何だろうとおもって、その裏木戸に近づいてみると、白樺の木にかくれていた半分は「…… Grocery」――なあんだ八百屋だったのか。だが、こんな家の裏手にぴょこんと八百屋が一軒あるきりなんて云うのはおかしいと思って、ずんずんその裏木戸を押しあけてみると、そこにはその八百屋をはじめ雑貨屋だの、理髪店だの、氷屋だのの看板を出した掘立小屋が一塊りに立っている。そして其処は道が三叉になって、東の方から上って来た道がそこで分かれて、一方は今の別荘の裏を通って外人部落のなかに消え、もう一方はこれは昔ながらの村道らしく、西に向って爪先下りに下がっていって、二町程先きで森のなかにはいっている。