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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
こう考えて来るうちに私は思わず武者振いをした。……この事件はちっぽけな殺人事件として片付ける訳に行かなくなった。うっかりすると日本民族の存立にかかわるような大事件を手繰り出すかも知れない。畜生。どっちにしても相手は大きいぞ……と逸る心を押し鎮めるべく敷島を一本啣えながら公園の中にある自働電話に駈け込んで、警視庁に電話をかけて赤原警部を呼び出した。これは新聞記者を避けるために私が用いる常套手段で、このために私は殆んど毎日五銭以上の損害を新聞記者から受けていると云っていい。
出て来た赤原巡査部長に何か報告はないかと尋ねると、直ぐに答えた。
「志免警部は十一時半までに横浜から何の報告もありませんでしたから、御命令の通りに各港へ電報と電話と両方で、女の乗客を調べるように通達致しました。それからタイプライターと法被に関する報告が書き取ってありますが……」
「読んでみたまえ」
「……一つ……芝区に向いたる轟刑事第一報告(午後十二時五分着)新橋二五〇九と染め抜きたる新しき法被を日蔭町の古着店にて発見せり。売却人は若き車夫体の男にて『この法被はいらなくなったから売る』