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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
ただ持ち前の無邪気な、落ち着いた眼付きで私を見上げていた。……のみならずその黒い大きな、二重瞼の眼はこんな事を云っているようであった。
「貴方が私を御覧になるのは只今が初めてでしょう。けれども私はずっと前から貴方のお顔を知っていたのですよ」
……と……。又その素直な恰好のいい鼻は、
「私がここにお伺いしましたのは大切な用事をお願い申上げたいからですよ」
という意味をほのめかしたようであった。そして又、その人懐こい可愛らしい締った唇は、軽い微笑を含んで無言の裡に云っていた。
「私は只今初めて貴方と言葉を交す機会を得たのを大変に嬉しく思います」
……と……。そうしてその身軽そうな均整った身体つきは、
「貴方をどこまでも正しい、御親切な方と信じております。貴方を深く深く尊敬しております」
という心持ちを衷心から表明しているかのように見えた。
正直なところを白状すると、私は、こんな風に落ち着いた少年の態度を見れば見るほど、心の底で狼狽させられたのであった。あとから思い出しても顔が赤くなるくらいイライラさせられたのであった。相手は自分をよく知っていて、すっかり信用して落ち着いているのに、こっちは少しも相手がわからないでいるばかりでなく、ただ無暗に驚いて、感心して、疑って、躊躇しているのが、我身ながら恥かしくて腹立たしいよう