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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
「それじゃこの志村浩太郎氏御夫婦が、君の御両親なんですね」
「はい」
少年はちょっと唇を震わしたが、それでも静かに眼を伏せた。
「しかし……」
と私はまだ不審が晴れやらぬまま、二三度新聞紙を引っくり返しながら問うた。
「……この新聞記事は随分いい加減なものなのです。この事件に関係した事で……まだ君が知らない国家の機密に属する重大な裏面の出来事なぞが全部ぬきになっているのです。……のみならず二年も前の出来事でバード・ストーン曲馬団の事なぞはちっとも書いてないのに、君はどうして君の両親がこの曲馬団に責め殺された事が判るのですか」
「はい」
と静かに答えた少年は、又も黒水晶のような眼を据えて私の顔を見詰めていた。そうして激しよう激しようとする心を落着けるべく努力しているように見えたが、やがてその長い睫を伏せて、ほっと一つ溜息をすると、如何にも淋しそうに声を落した。
「……僕は……父の遺言書を……見付け出したのです」
私はポケットから取り出しかけた敷島の一本をぽとりと床の上に取り落した。
「えっ……な……何を……」
「父の遺言書です……その新聞記事を便りにして探し出したのです」