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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

「……それは……酔っ払って……転んだものと……」

「……ですけども……僕はそうじゃないかも知れないと思ったんです。……ですからその晩になって夜が更けてから、こっそりと帝国ホテルを脱け出して、あの木の下に来てみたら、大きな四角い石ころが一個、拡がった根っ子の間に転がっておりました。僕がやっと抱え除けた位の大きさですが、まだあそこに転がっております。その石の下を覗いてみたらすぐに見つかりました。土の中から、こんなものが一寸ほど頭を出しておりました。大方雨に洗い出されたのだろうと思いますが……」

私はもう口を利く事が出来なかった。黙って椅子から立ち上って、少年が差し出した長さ三寸程の鉛の管を受取った。それは両端を打ち潰して封じてある一方をこじ明けたもので、中からは白い紙の端が覗いている。引き出して見ると、それは二枚の名刺で、その中の一枚は、

弁護士 藤波堅策

東京市麹町区内幸町一丁目二番地

電話 二二七三

という一流弁護士のもので、もう一枚はペン字で書き込みをした故志村浩太郎氏の名刺であった。

藤波堅策兄

志村浩太郎※

この名刺持参人に御保管の書類を

お渡し被下度候

「この名刺を探し出すまでは何でもなかったんです。