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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

かくして日本の石油保有量に関する疑問は「日本一蹴すべし」という主張の下に樹てられたる前記の東洋米化政策を実行すべきウオル街の金権政治家と、その仕事を引き受けたJ・I・Cの首脳者とが、その政策の実行に先立って、深甚の考慮を払わねばならぬ重大問題と化して来たのであります。

この問題に関する前記のウオル街、全権代表、G・シュワルト氏と、コンドルと、小生との間に行われました前後数十回の討議は、米国式国民外交の特徴を遺憾なく発揮した波瀾万丈を極めたものでありました。勿論、その会議の中にはG・シュワルト氏の紹介による匿名の政府吏員も適時参加したのでありましたが、その結果最後の勝利を得たものは、あくまでも強気一点張を以て終始したコンドルの主張でありました。

すなわち……。

一、日本の対米硬化は恐るるに足らず。米国政府の極東政策は既定の通り実行すべし。

二、日本の対米外交硬化の原因は、新油田発見の報なき点より見て、石油の秘密購入貯蔵にある事明白なり。又、新動力機関の発明等に非ざるは軍艦、潜航艇等の改造、新設計等が依然として旧態に依るを見ても明かなり。故に日本内地に於ける石油の秘密貯蔵個所を発見して、万一の際これを爆破するだけの用意を整えおけば、それだけにても戦闘準備は十分なり。