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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
但し、カルロ・ナイン嬢はこれに加わらずに、馬を卓子の一方に立てて長い銀革の鞭を廻して四人を指揮していた。
場内から割れるような喝采が起った。同時にこの演技が終りを告げると、嬢を中心にした四人の騎兵が今度は立乗りをしながら、拍手を浴びつつ一列になって場内を廻転しはじめた。
けれどもその第一周目が終る迄に私はふと妙な事に気が付いていた。ちょっと見たところ、五頭の馬はカルロ・ナイン嬢の銀の鞭で支配されているようであるが、実はそうでない。いつも嬢の直ぐ次に馬を立てるあの色の黒い、鬚武者の巨漢が、眼色や身振りで、自在に操っているのである。これは卓子飛び越しの最中に見付けた。それからもう一つはカルロ・ナイン嬢の馬の乗り方があまり上手でない事である。もちろん普通には乗こなしているに違いないが、他の連中の馬術があまり達者過ぎるために、際立って危なっかしく無調法に見える。しかしこれは、いくらか乗馬の経験を持っている私にそう見えただけで、軽業見物のつもりで来ている連中には気付かれないかも知れない。
ところでこれだけの事ならば、別に不思議はないようなものであるが、今の第一周目で、五頭の馬が私の前を馳せ過ぎる時に、中央の白馬に乗っているカルロ・ナイン嬢と、その次に馬を立てている鬚武者とが二人ともちらりちらりと私の顔を見て行った