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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
この次の「馬上の奇術」は演技者が居ないからやらない事は明白である。
……あとは順序通りに行けば、幕間二三分乃至四五分の後に始まるであろう、馬の舞踏会である。戦慄すべき馬の舞踏……。
……瞬間……おそるべき幻影がまざまざと私の眼の前に描き出された。
……場内に数十頭の裸馬が整列する……。
……その間に軽羅を纏うた数十名の美人が立ち交って、愉快な音楽に合わせて一斉に舞踏を初める……。
……けれどもそれは、まだ十分と経たない中に見る見る悽惨を極めた修羅場と化する……。
……数十頭の馬が突然棹立ちになって狂いはじめる……。
……噛み付く……。
……蹴飛ばす……。
……飛びかかる……。
……抱き倒す……。
……蹂み躙る……。
……数十名の美人は悲鳴を揚げて逃げ惑いつつ片端から狂馬の蹄鉄にかかって行く……肉が裂ける……骨が砕ける……血が飛沫く……咆哮……怒号……絶叫……苦悶……叫喚……大叫喚……。
……大虐殺の見世物……。
……活地獄のオーケストラ……。
……私の罪……。
……肝魂が消え失せるとはこの時の私の事であったろう。頭の中がグワーンと鳴った。眼の前に灰色の靄がズ――ウと降りて来た。