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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页
譬えば鴉がいつもと違った陰気な低い声で「カアア……」と啼く。おやと思ってその方を見る。その瞬間、その人の頭の中にあるいろいろのあり触れた妄念が綺麗に消え失せて、只ぽかんとした空っぽの頭になる。そこに「第六感」がアリアリと浮かみ現われて、その日のうちに起りかけている悪い出来事を感じている。
鼬がすらりと道を横切る。……アレ……と思ってその影を見送るはずみに、今まで考えて来た事をふッと忘れる。あとには「第六感」だけが残って、行く手の災難を予覚している。
誰でも下駄の鼻緒が切れるとハッと思う。何も考えずにジッと見詰める。その心の空虚に「第六感」が閃めきあらわれて、誰かの大病を感付いている。
夢を見て覚めた瞬間はどんな英雄豪傑でもぽかんとしている。その時に第六感が働く。夢が悪いのではない。その夢を見て覚めた瞬間に第六感が凶事を感ずるから、今見た夢が何かしら悪いしらせのように感じられるので、そんなのが後に正夢となって思い合わされるのである。
前に挙げた数例でも同様で、別に鴉や、鼻緒や、鼬が凶事を知らせている訳ではない。その瞬間に受けた「第六感」の感じがよくなかったのを錯覚して、鴉や、鼻緒や、鼬が気を悪くさせたかのように人に話す……そうすると、そんな感じを経験した人が案外多いために、吾れも吾れもと共鳴してこんな迷信