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ダーク・ミニスター

暗黒公使

夢野 久作

「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 214,561 字 · 420 页

青空文庫

精製するのは何でもないから……。いい事を聞かせて下すって有り難う」

「……私はその貴方の御本を読みましたから、いろんな事を考えるようになりました」

「……どんな事を……」

「すべての草や、木や、土や、生き物の中には、まだ沢山の秘密が隠れているだろうと……」

「……フーム……たとえば……」

「例えば何故人は毒薬を飲むと死ぬのだろう。その人の身体を犯されると何故その人の生命までいけなくなるのだろう。生命と身体とは別か一緒か……」

「ハハハハハハ。それは科学の問題ではない。哲学か、心霊学者の仕事だ。君は余りに空想に走り過ぎている」

「けれども若しこの事がハッキリとわかったら……毒薬も電気も何も使わずに、生命だけ取ってしまう工夫が出来たら、身体にちっとも傷が付きませんから、絶対に見つからない人殺しが出来ると思います」

「……………」

私はこの少年の想像力の強いのに驚いた。到底頭の干涸らびた私なぞの及ぶところでない。十六や七の少年とは無論思えぬ。しかしその想像し得た事柄は、如何にも好奇心の強い、少年時代に相応した事柄ではある。

「成る程。それは一応尤もですね。しかし現代の科学はまだそこまで進歩していないのです。